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第8回北海道淡水魚保護フォーラム

希少淡水魚の生息状況と保護施策

後藤 晃(北海道大学大学院)

後藤 晃(Akira Goto)
昭和22年大阪府東大阪市に生まれる。昭和52年北海道大学水産学研究科終了(水産学博士)。
日本および東ユーラシアの淡水魚類の分子系統、生物地理、生態、行動などを調査することによって、その起源と分散、種分化、種多様性を明らかにする研究を行っている。また、外来性大型魚ブラウントラウトによる在来魚類群集への影響、希少魚類の保全生物学などの研究も進めている。主な著書には「川の魚たちの歴史」,「日本の淡水魚類ムその分布、変異、種分化をめぐって」,「川と海を回遊する淡水魚ム生活史と進化」,「トゲウオの自然史ム多様性の謎とその保全」など多数。 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター・大学院水産科学研究院教授。

 


 北海道の河川と湖沼には、85種2亜種の淡水性および汽水性魚類が生息している。しかし、この中には、ニジマス、ブラウントラウト、ゲンゴロウブナ、モツゴ、タイリクバラタナゴ、ブルーギルなど、もともとは北海道に分布していなかった外来魚14種も含まれている。したがって、これらの外来種を除いた約70種が北海道の在来魚種となる。

 「北海道の希少野生生物-北海道レッドデータブック2001」(北海道、2001)では、これらの在来魚種のうち、絶滅あるいは絶滅のおそれのある種として、絶滅種1種(チョウザメ)、絶滅危機種3種(ミツバヤツメ、イトウ、ベニザケ(ヒメマス))、絶滅危惧種1種(エゾホトケドジョウ)、絶滅危急種3種(スミウキゴリ、シロウオ、カジカ中卵型)が選定されている。また、この他に希少種として14種、絶滅のおそれのある地域個体群として6種の個体群が指定されている。

 こうした淡水性と汽水性魚類の絶滅危惧種の多さには、北海道における1970年代以降の河川環境の急激な人為的改変、特に河川の直線化と護岸ブロック化、各種のダム・堰堤の建設、河畔林の過度な伐採などによる生息地の縮小、河川内におけるハビタットの減少・単純化、および外来魚の増加が影響していると考えられ、その一つの典型例として函館近郊の戸切地川(流路延長21km)における過去30年間にわたる河川環境の悪化と魚類相の変遷を詳しく検証する。

 近年、河川の自然生態系とそこに生息する在来魚類の保護・保全を図るための活動が北海道でも活発に行われるようになっている。そうした保全活動には、個々の絶滅危惧種を対象としたハビッタトの改善・造成、産卵期における禁漁処置によって個体群の増大を図る施策(例えば、イトウ)の他に、過去に直線化された本川を周辺に取り残された三日月湖(旧川)と再連結させることによって河川環境の多様性を復元し、そこに生息する在来魚類の個体群の種多様性を回復させる試み(例えば、標津川の蛇行復元事業)も行われている。こうした幾つかの保全施策についての現状を紹介する。