ホームページ 北海道淡水魚保護フォーラム報告 オピニオン 運営委員 書庫 お問い合わせ 活動の記録 更新履歴

第2回北海道淡水魚保護フォーラム


平野 令緒

平野 令緒 (ひらの れお)

国土交通省北海道開発局河川計画課



 北海道の河川は、明治になり入植が進むと、利用可能な土地の確保のため、地下水位の低下や洪水氾濫防御を目的とした捷水路工事が進められ直線化されてきた。これにより、利用可能な土地は飛躍的に増加し、北海道の人口も増えた。その結果、生態系において重要度が高いと言われている湿原が減少し、河川環境が大きく変化した。近年の河川環境保全・再生の動きの中で、流域管理の視点からより積極的に河川環境の保全再生を行うため、比較的自然状態が残されている蛇行旧川を多く持つ標津川において、蛇行復元計画が検討されている。

 標津川は、流路延長78km、流域面積は671平方キロメートルであり、北海道東部の知床半島から阿寒に続く火山地帯の位置する標津岳に源を発し、標津町でオホーツク海に注ぐ2級河川である。
 標津川流域の土地利用変遷を見ると、この土地への入植は明治45年であり、昭和20年頃までは流域の大部分が森林で覆われ、支川の武佐川合流点より下流では氾濫原の湿地であった。昭和40年代以降の大規模草地改良事業や蛇行部の直線化や築堤工事が進み、現在では河川沿いに河畔林が見られる他は殆どが農地に変わっている。この結果、流域の治水安全度は飛躍的に向上するとともに湿地が利用可能な土地へと変化し、標津川の改修は地域の発展に大きな役割を果たしてきた。しかし、近年時代の変化とともに標津川をとりまく状況も大きく変化してきた。流域の主力産業である農業と漁業が共存できる河川環境の創造のため「河川改修により変化した河川生態系の復元、河岸侵食に伴う土砂や流木の漁場への流出の湾曲の復元による影響軽減等」河川と流域のあり方に対する地域要望が高まりを見せている。
 このような中、平成9年に河川法が改正され、「河川環境の整備と保全」が位置付けられ、標津川においても、治水安全度を確保することを念頭においた河川における自然復元のモデルケースとして、地域要望を反映するための新しい新しい試みとして蛇行復元計画が検討されている。


標津川は河道の直線化による改修が進められたが、元の湾曲部が閉鎖性水域として残されており、この旧河道を利用した蛇行河道の復元が計画された。計画では、旧川が残されており、比較的広い範囲で河川区域として利用可能な土地が確保できる武佐川合流部下流左岸(写真-1)を対象区域とし、さらに無堤部で旧川が残っているKP8~9の右岸(写真-2)をその試験区間として選定している。この試験区間で蛇行復元の様々な事前事後調査を実施し、その結果を受けて対象区間で本格的に実施することとしている。

蛇行復元区間
写真-1 蛇行復元区間

試験施工区間
写真-2 試験施工区間



取り組みの目標は、

1,増大した流域からの負荷を軽減し河川水の水質向上を図る。
2,標津川にかつて数多く生息し、北海道東部の河川の象徴的な魚であるイトウやアメマスが生息するとともにサケ・マスの自然産卵ができる環境を復元する。
3,河川とその周辺部を利用して市街地の治水安全度の向上を図る。
4,従来の標津川の景観を復元するとともに地域の活性化を図る。

である。
 この取り組みを実施するに当たっては、流域全体の視点から計画・設計・施工・維持を通して評価改善をその都度行っていく必要があり、そのためには高度な技術力が必要とされる。このため学識経験者等からなる標津川技術検討委員会を設置し、現在技術的な検討が進められている。蛇行の復元方法としては、現在3つの案について検討が行われている。

1,旧川蛇行部と現河川とを連結し、常時両方の河道に流す案
2,旧川蛇行部と現河川とを連結するが、平常時は旧川のみに流す案
3,現河道を埋め、旧河道のみを河道とする案

上記いずれにおいても、蛇行復元箇所は、標津川のごく一部であることから、土砂や水の流下についてバランスが崩れ、復元箇所において土砂堆積や洪水氾濫といった問題が生じてしまう。また、改修に伴い形成された旧河道の停滞水域には新たな生態系が創出されており、その中には貴重種に該当する植物が生息しており、蛇行復元により現在の生態系の破壊が生じてしまう。さらに、蛇行を復元することにより地下水位が上昇し、周辺の土地利用が行われている箇所への影響も懸念される。これらの課題は程度の差はあるがどの河川においても蛇行復元を行う上で避けて通れない課題であり、流域全体での取り組みとして様々な議論を行っていく必要がある。
 上記の諸課題も含め、蛇行復元にあたって、標津川技術検討委員会では次の項目について調査検討を行っている。

1,河道の変化
2,地下水位の変化
3,河川への流入水質の浄化方法
4,植生・景観の復元方法
5,現河道および旧河道生態系変化
6,魚類の生息環境変化

 これらの調査は、先行して行われる試験区間でデー夕を蓄積し、対象区間の計画に反映させる予定である。

「北海道・淡水魚保護フォーラム No.2 川の環境と淡水魚の多様性を守る」
(2001年11月24日、大沼国際セミナーハウス) 講演要旨
(C)2001 Reo Hirano, All rights reserved.